silkywhisky

ジュラ12年 ― 寄り道する価値のある、親しみやすい島

François Reeves

ジュラの個性を語るうえで欠かせないのは「孤絶」だ。島を貫く道は一本、集落もひとつ、蒸溜所もひとつ、そしてアイラ島から海を渡ってたどり着く。通常なら、その辺境性こそがブランドの物語となり、価格のプレミアムに変わる。ジュラはそれを価格へ転換してこなかった。理由は1960年頃の再興史にある ― ブレンドの中で働く軽い酒質を求めて、ブレンデッド会社の資金で設計された蒸溜所だからだ。そして二つの評価モデルはいま、ほぼ同じ結論に達している。ほぼ適正価格。島のシングルモルトへの、数少ない「開かれた」入口である。

濃色の木のテーブルに置かれたジュラ12年のボトル。周囲には化石を含む淡い色の石と、丸みを帯びた浜の小石が並ぶ。
撮影 François Reeves

ジュラというウイスキーの個性を語るうえで、まず欠かせないのが「孤絶」という言葉だろう。島を貫く道はほぼ一本。集落もひとつ、蒸溜所もひとつ。そしてアイラ島から海を渡ってたどり着く。通常なら、こうした辺境性そのものがブランドの物語となり、価格にもプレミアムとして反映される。しかしジュラは、少なくともこれまで、その物語を価格へと転換してきた銘柄ではない。

その背景には、蒸溜所再興の歴史がある。1960年頃、島の人口流出を食い止めようと、二人の地主が中心となって蒸溜所を復活させた。その事業を資金面で支えたのが、ブレンデッドウイスキーを手掛けるチャールズ・マッキンレー社だった。

設計を担ったウィリアム・デルメ=エヴァンスは、高さ約25フィート(約7.6メートル)という非常に背の高いポットスチルを採用した。目指したのは、海峡の向こう、わずかな距離にあるアイラ島のヘビーピーテッドなモルトとは対照的な、軽やかでハイランド的な酒質である。

つまりジュラは、ブレンドの中で力を発揮するモルトとして設計されたとも言える。だが、突出するのではなく全体に溶け込むことを求められた原酒は、シングルモルトとして高いプレミアムを生む「明確な個性」を築きにくい。ジュラには申し分のない物語がある。それでも、その物語が価格にまで反映されることは、これまであまりなかった。

そして評価という観点から見ると、ジュラ12年は興味深い一本だ。珍しいことに、二つの評価モデルがほぼ同じ結論を示している。

相対価値モデルでは、市場価格を上回る価値が算出され、ファンダメンタルズを積み上げたモデルでも結果はほぼ同じ。価値の中心にあるのは、何より12年という熟成年数だ。比較的スタンダードなバーボン樽、40%というアルコール度数、そして「良質ではあるが傑出しているわけではない」という市場評価は、それ以上の大きなプレミアムを生んでいない。下のリアルタイム評価パネルが示すのも、ほぼ適正価格という結論である。

ここで興味深い比較対象となるのがタリスカー10年だ。こちらは二つのモデルの評価が大きく分かれる。

むしろ、この違いこそが比較の面白さでもある。モデルが乖離するところに議論が生まれ、モデルが収束するところには、物語によるプレミアムをほとんど持たない価格の姿が見えてくる。

そして最後に、「ジュラ」という名前にはちょっとした地質学的な皮肉がある。

今回の写真に写るのは、二つのまったく異なる「ジュラ」だ。ひとつはフランスのジュラ。その石灰岩の山々は、地質時代の「ジュラ紀(Jurassic)」という名称の由来となった。

もうひとつは、スコットランド・ヘブリディーズ諸島のジュラ島。こちらを形づくる古い珪岩(クォーツァイト)は、およそ6億年前のものだ。

ジュラ紀という名を生んだ、化石を豊富に含むフランスのジュラ。

その名を冠しながら、ジュラ紀よりはるか以前に形成され、化石をほとんど残さない岩盤の上で造られるスコッチ、ジュラ。

一本のボトルを挟んで、二つの「ジュラ」が数億年の地質学的な時間を隔てて向き合っている。